トーキョークラブ
─────「…何やってるのよ?」
午後2時、自社スタジオ。
少し遅れたため急いで厚い扉を開くと、そこで行われていたのはセッションなんかじゃなかった。
「潤、本気で言ってんのか!?」
洋平が声を荒げて
潤の胸ぐらを掴み上げている。
あたしは、すぐに状況を読み取った。
潤が、言ったのだ。
自分だけに来た
メジャーデビューのオファーを。
「潤はこのバンドを捨ててもいいのかよ!何のために4人で上京したんだよ?本気で音楽やりてぇからだろ!」
洋平は潤を睨み、掴んだ胸の手を離そうとはしない。
「ああ、そうだよ。俺は本気で音楽をやりに上京した。競争の激しい世界で、やっと本気で音楽をやれる時が来たんだ。このチャンスを棒に振ることはできない」
「てめぇはそうやって、自分だけが誘われたことを平気で喜ぶのか?」
洋平はいきなり潤の胸から手を離し、そしてまたきつく睨みつけた。