夏、僕らは変わります。
嫌いな奴

しまった。昨日の雨で靴がまだ半乾きだ。


いつもの毎日使っているスニーカーを履いた瞬間なんだか生温かいような、冷たいような感覚が僕の足を襲った。

ぎりぎりこの靴でも登校できないこともないが、水をすっているせいで足が重い。
それに靴下がこれもまた中途半端に濡れてしまいそうだ。(というかすでに濡れてしまっている……)

だが、もう両足その靴をはいてしまった。変えるのもめんどくさい。

僕は朝から1つため息を吐き、玄関の扉をあける。
なんだか足に独特のなれない感触が気持ち悪い。これだから梅雨は嫌いなのだ。


「いってらっしゃいねー」

僕が家を出るのを見ていたのか、台所の窓から母が顔をのぞかせ手を振る。
毎度、毎度そんな風に声をかけられるのも恥ずかしいのだが。

僕はこれも母の好意なのだから、とあえてそのことには触れずに「んー」と適当に返事をしておく。これはもう学校登校日の日課だ。


幸い家から学校はさほど遠くないので10~15分程度歩けばつく。
僕はこの気持の悪い靴の履き心地からぬけ出したくて知らぬ間に早足で歩いた。
と、後ろから自転車のタイヤのまわる独特の音が聞こえた。と、同時に
「タカ、おっはよー」という無駄に元気のよい挨拶が僕の耳元で響いた。









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