月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「そりゃ、この業界ですから、妬みやそねみが無いとは言いません。ですが…」

「明確にこれといったものが思い当たらないと…?」

達郎兄ちゃんの言葉に杉田さんはうなずいた。

「脅迫状は今、持っていますか」

杉田さんは手にしていたカバンから大きな封筒を取り出した。

「何かあった時のために、いつも持ち歩いているんですが…」

杉田さんがちらりと翼さんに目をやる。

翼さんは硬い表情をしていた。

それはそうだろう。

何かあった時とは、翼さん本人に何かあった時のことなのだから。

「拝見します」

達郎兄ちゃんは黒い絹の手袋を両手にはめ、封筒を受け取った。

その大きな封筒の中には白い封筒が5通、入っていた。

達郎兄ちゃんはそのうちの1通から手紙を取り出して、広げた。

あたしと湯月くんは横からそれをのぞき込んだ。



『藤本翼。お前の居場所で、お前の翼をもぎ取ってやる』



手紙にはそう書かれていた。

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