月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
脅迫状という他は言い様のない文面だ。

「聞いていると思いますが、手紙はどれも同じ内容です」

杉田さんの言う通り、どの手紙にも、ワープロ文字で全く同じ文章が書いてあった。

「お前の居場所、ですか…」

達郎兄ちゃんが唇を尖らせた。

考え事をする時のいつもの癖だ。

「この手紙は警察に提出しておいた方がいいですね」

「しかし…」

そんなことをしたら世間に知られてしまうと、杉田さんは難色を示した。

翼さんは、うつむいたまま、何も言わない。

「ご心配なく」

達郎兄ちゃんは、いつもの瞳で、じっと杉田さんを見据えた。

「今回の捜査にあたるのは、あくまでも僕個人です。警察に現場介入は、させません」

うーん、単なる民間人がそこまで約束していいいのだろーか。

でも達郎兄ちゃんなら出来ちゃうんだろうなー。

「わかりました」

しばらく間が空いた後、杉田さんは不承不承といった感じでうなずいた。

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