月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「入るな!」

杉田さんの怒声が響く。

「いや、もう入っててもらった方がいいです」

達郎兄ちゃんがメイク台の前で淡々と言った。

「いや、しかし…」

「下手に騒がれてスタジオ内がパニックになったらどうします」

達郎兄ちゃんはそう言ってメイク台の鏡を見つめた。

そこには貼紙が一枚。

貼紙には、こう書かれていた。

【この部屋に爆弾を仕掛けた。命が惜しかったら、藤本翼は今すぐ主役を降りろ】

ば、爆弾…!?

「じょ、冗談よね?達郎兄ちゃん」

「これで犯人の狙いがはっきりしたな」

達郎兄ちゃんはあたしの問い掛けを全く聞いてなかった。

「狙いは、CMの主役だったんだ」

昨日の、浜口理子の顔が浮かぶ。

「じゃあ、やっぱり浜口理子が…」

「いや、それはない。こんなリスクの大きなやり方法を、有名人がとるわけがない」

「じゃあ誰が…」

「それを考えるよりも先に、まずはコイツをどうするかだな」

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