時雨


夢を見たー…



父と母の夢。



手を伸ばしても、
どんなに伸ばしても、
届かなくて…、


やがて2人は
居なくなった。



心弥も出てきて、
心弥にも手を伸ばした。



けど、



届かなかったー…



「…っ!夢、だよね。」


時計を見ると12時を
回ったころだった。


夢が本当にならない事、
なっていない事を
確かめたくて、
本当になっていたら
怖くて、私は、急いで
学校に行く準備をした。




急いで学校に行くと、
心弥を探した。


「いた…。」


すると、心弥が私に
気付いて、男子の輪から
外れてこっちに来た。



「どうした?
泣いた、だろ?」


「大丈夫。
変な夢見ただけだから。」


「俺は…、


絶対居なくなんない。

絶対海莉を
1人にしない。」


心弥の言葉が、



滲みる。



「ありがとう。」



私は、あまり学校に
来ないからか、
愛想が無いからか、
学校で話すのは
心弥だけになっている。


たまに他の男子と
話すこともある。


でも、女子とは話したことも、目を合わせたこともない。


話す必要も、目も合わせる必要もないと思うから。



恋愛的に、とかじゃなくて
私には心弥が居れば
十分だから。


心弥以外要らないから。


だから、辛いと
思ったことも
誰かを必要としたことも
一度もない。



でも、私には誰かを愛す資格なんて、ない。



誰かに愛される資格も、ない。




汚いから。



汚れたから。


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