時雨
汚されたから―…。
赤く、黒く、汚れた記憶が私を蝕む。
吐き気がする。
目眩がする。
頭痛がする―…
「真山?大丈夫か?」
顔を上げると目の前には
私たちのクラスメイトで
心弥とよく一緒にいる…
「あ!俺、芦間遥太!
話したことないよな!」
太陽みたいに笑う子。
「うん。」
「学校来ないよな。」
「うん。」
「なんで?」
「雨、嫌いだから。」
「そっか。」
「…。」
太陽みたいによく笑う
この人は何を言いたいんだろうか?
遥太は海莉の瞳を見て言った。
「綺麗だな。」
「え?」
「お前の瞳。」
「ありがとう。」
私がお礼を言うと遥太は小さく
「…母さんと同じ色だ。」と呟いた。
海莉は遥太の中にある
“何か"を悟った。
きっと遥太の過去には何かある。
私や心弥にあるように。
遥太の横顔はどこか悲しそうだった。
「淋しい?」
海莉は気がつけば、そう尋ねていた。
「淋しくないよ。」
「そっか。」
遥太は海莉の瞳を真っ直ぐに見ながら
「守りたい奴がいるから。」と言った。
その時の遥太は、とても強い瞳をしていた。
…次の時間さぼろうか。と、考えていたとき
心弥からメールが入った。
♪〜♪〜♪
From:心弥
06/12 13:10
Sub: 無題
――――――――――
今日帰れる?
心弥は私がYesと言わなければ
無理強いはしない。
To:心弥
06/12 12:15
Sub: Re:
――――――――――
うん。
心弥と帰るならサボる、
なんて出来ない。
結局、この日は久しぶりに
半日学校に居た。