苦くて甘い恋愛中毒
彼が動く気配に、思わず体を震わせる。
私に近づいた彼に、半ば無理矢理顔を上げさせられた。
そして。
「本当に救いようないな。やめとけって言ってんのに」
そう言って、静かに笑顔を見せるから。
スイッチが入ったみたいに、今まで以上にぼろぼろと涙が溢れ出た。
こんなことになるなら、ちゃんとウォータープルーフのマスカラにすればよかった。
きっと史上最強に不細工に違いない。
その証拠に、彼が指を差して笑う。
確かにそうなんだろうけど、デリカシーってものはないのか。
彼が煙草を灰皿に押し付けたのと、私の唇を奪ったのは、ほぼ同時だった。
「ん……っ、」
嫌でも漏れる声が妙に甘美だ。
さらに、咥内を舌が這い纏わる音までもが加えられるキスだけで、倒れそうになるなんて。
ふらついてまともに立っていられないから、彼の両腕にしがみつく。
支えてくれたっていいのに、不敵な笑みを浮かべるだけでその手を伸ばそうとはしない。
この人、根っからのSだな。
また合わさろうとする唇を拒んで、彼を見上げ視線を合わす。
「私は離れてなんてあげないから。利用されようと遊ばれようと、私の気が済むまで好きでいる」
だから、覚悟しといてくださいね。
――そう言って、今度は自分からキスをした。