苦くて甘い恋愛中毒
「それでもいいよ。要さんには何も期待しない。私のこと、好きじゃなくても構わないし、要さんが面倒に思うようなこともしないから」
それなら、いいでしょ?
それでも、側にいたいの。
想いと一緒に、涙までもが溢れだす。
しばらくの沈黙の後、要さんはゆっくりと私に近づいてその綺麗な指で私の涙を拭った。
「みんな最初はそう言う。はじめはそれでもいいって言っといて、最後には自分から離れてく。もういい加減うんざりなんだよ。だから、お前もやめとけ」
もっといい恋愛しろ、と言いながら私から離れる。
何でそんな中途半端に優しいこと言うのよ。
ずるいって言ってるのは、そういうところなんだってば。
「だったら、なんでキスなんかしたの? メールなんてしてきたの?! さんざん人のことすきにさせといて、今更やめろなんて勝手すぎる」
「キスなんかただの出来心だ。お前もはたち過ぎてんだからそんくらい分かれ」
彼の冷たく低い声に萎縮する。
たしかに彼の言うとおり、男の人はなんの感情もなくてもあれくらいできるんだろう。
彼にしたら、生意気な女をちょっとからかってやったくらいなのかもしれない。
でも。
「私、いい恋愛がしたいなんて言ってない。私が欲しいのはそんなんじゃない。やめとけっていうけど、そんなのできるならとっくにやってる。でも無理なんだもん、しょうがないでしょ」
俯いて、涙を堪えながら口を開いたから、思わず声が震えてしまった。
次に彼がなにを言うのか、するのか、分からないから怖い。
次に拒まれたら、私はきっともうなにも出来ない。