私だけの王子さま
さっき、花梨さんが言っていた。
委員長はきっと‘寂しい’のだと……。
だったら、私はずっとそばにいたい。
委員長が寂しくないように。
‘ここにいるから’
私の口から出たその言葉を聞いた途端、委員長の腕の力が抜けた。
少しは楽になってくれたのだろうか?
そう考えるとホッとした。
道のど真ん中で、抱き合う二人。
まだ何も聞いてはいないけれど、身体だけでなく心も近くなっている。
そんな気がしていた。
それなのに―――……
……聞こえて来たんだ。
私たちの間にある、柔らかな空気を壊す声が。
もう二度と、聞きたくないと思っていた、あの声が―――……
「柚…?」
背後から聞こえてきたその声に、私は確かに聞き覚えがあった。
ハッとして委員長から身体を離し、恐る恐る振り返った。
「ア…キラ…」
そう。
振り向いたその先には、あの日私をどん底に突き落とした、
アキラの姿があったんだ―――……。