私だけの王子さま



腕をガシッと掴まれ、振り向いた瞬間…


その勢いで、鞄が地面に落ちた。



涙でぼやけて見える、委員長の顔は、とても真剣で。


声も…とても焦った声だった。


いつかの電話で、私を引き止めた時のように…。




涙でぐしゃぐしゃになった私を見て、委員長はギョッとした表情を見せた。



「な…んで、

泣いてるんだよ…?」



「だって…」


‘ごめん’って――…。



ダメだ。


涙が止まらない――…。





その時、一瞬だけ身体がフワッと浮いた。



そして、同時に伝わって来たのは…


…温かい、感触。



委員長の、温もり―――…。



「…委員長…?」



戸惑う私に、委員長が一言言った。



「人の話…


最後まで聞けって…」



それは、いつもの優しい話し方とは違う、



男らしい口調だった――…。





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