Monsoon Town
それから数日後に、母親の葬儀は行われた。

「不倫ですって」

「旦那さんと息子さんがいたのに、男と会ってたって」

「ウソー」

耳に入ってくるのは、母親に関する話だった。

その言葉に対して、陣内は何も返そうとしなかった。

藤堂は、祖父の隣にいる陣内の背中を見つめることしかできなかった。

「――かわいそうに」

その言葉が、藤堂の耳に入った。

(かわいそうって、誰が?)

藤堂はその言葉を言った人物を探すが、こんな参列者の多い中で見つかるはずがなかった。

一体、誰が“かわいそう”だと言うのだろうか?

母親に捨てられた陣内だろうか?

若い男と不倫をして、駆け落ちしようとした矢先に死んだ母親だろうか?
< 327 / 433 >

この作品をシェア

pagetop