Monsoon Town
こんなに泣いたのは、あの日以来だった。

母親に捨てられ、亡くなった日以来だった。

あの時点で、涙は枯れたと思っていた。

一生分泣いたと、そう思っていた。

けど、
「まだ枯れてなかったんだな」

そう呟いて、窓ガラスに映る自分に自嘲気味に笑った。

笑っても、また涙はこぼれ落ちた。

いつまで泣き続ければ、気が済むのだろうか?

いつまで泣き続ければ、自分の中から母親が消えるのだろうか?

そう思っていたら、誰かに後ろから抱きしめられた。

今にも折れそうなくらいの細い腕に、小さな手だった。
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