Monsoon Town
動けなかった。

いや、正確には動くことをやめた。

過去を聞いた後、ひまわりは陣内を探しに行った。

その後で、綾香も後を追うようにロビーを出て行った。

「――追わないのか?」

ソファーに座ったままの那智に声をかけたのは、藤堂だった。

那智は首を横に振ると、
「――結果は、わかってますから…」
と、言った。

陣内はひまわりを選ぶ――自分が後を追わなくても、その結末はわかっていた。

そう思うと苦しいけど、彼への未練はない。

「久しぶりに、現実の世界で恋ができたから」

そう言った那智に藤堂は不思議そうな顔をしたが、すぐに納得したようだった。
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