Monsoon Town
陣内を好きになった時も、心のどこかでは結果がわかっていた。

もっと言うならば、陣内の心の中に自分がいないこともわかっていた。

それなのに、振り向いて欲しいと思っていた。

自分を愛して欲しいと思っていた。

結果がわかっていても、健気に思い続けていた自分に笑えた。

綾香は自嘲気味に笑った後で、
「――仕方がないな…」
と、口の中で呟いた。

この恋は、もう終わりにしよう。

未練がましく思っていても、仕方がないだけだ。

もう陣内は、他の人と結ばれたのだから。

開けっ放しの窓を閉めるように、この恋を終わりにしよう。
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