Monsoon Town
太もものうえで握られている拳が、痙攣にしているのかと聞きたくなるくらいに震えていた。

それにあわせるように、日高の躰も震えていた。

「――あいつが…ミユが、いけないんだ…」

震えた声で、日高が言った。

「ミユが僕以外の人間と話すから…。

僕以外の人間に近づくから…。

僕以外の人間に、笑顔を見せるから…」

うまく言えないのは、震えているからなのだろうか?

「ミユは僕だけを見ていればいいんだ!」

突然叫んだ日高を、陣内は黙って見つめた。

伏せていた彼の目があがったが、その目には憎悪しか映っていなかった。
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