Monsoon Town
そう言い返された那智は、言い返す言葉を失くした。

「――桃井…」

「んっ?」

「桃井那智!」

怒鳴るように、那智は自分の名前を陣内に名乗った。

「怒られながら名前を言われたのは、初めてだな」

陣内は苦笑いをした。

(自分が名乗れって言ったくせに!)

こんなことで取り乱してしまった自分を恨みながら、那智はうつむいた。

「次に出会ったら、運命と信じるんだな」

(運命…?)

その言葉に、那智は反応する。

恋愛小説のようなロマンチックな出会い方じゃないのに、再会するなんてことがありえるのだろうか?

小説的にも、現実的にも、彼との出会いはとてもロマンチックとは言えない。
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