赤ずきんちゃんと狼くん-結婚編-


「きっ、期待なんてしてないわよ!冗談じゃないわ!わたしは、自分の家に帰るのよ!」




真っ赤な顔でまくし立てたわたしは、彼に背を向けて走り出した。













――――はずだった。

確かにわたしは、彼に背を向けて自分の家を目指して走り出した。
けれど、今のわたしは地面に俯せの状態で倒れ込んでいる。しかも、全く動けない。




「‥っ」



彼に何かを言おうにも、わたしの声は喉から発することもできない。


今のわたしは、動くことも喋ることも出来ない状態で、地面に俯せている。



彼を睨みつけ、゙離しなさいよ"と口パクで伝える。




「すみません。何を言っているのかわからないので、普通に話していただけますか?」



ニッコリと微笑みながら、わたしに喋ろという彼。
゙ふざけるな!"と叫びたいけれど、声が出ないわたしはグッと堪えて彼を睨んだ。




「‥おかしいですね」




急に顔をしかめてわたしを見つめる彼に、゙何が?"という視線を向ける。



「いつものあなたなら、この辺で怒鳴り声の一つでも上げるはずなのに‥。しかも、立ち上がりもしない」



゙地面が好きなんですか?"と言い出した彼を、思いっきり睨みつけた。



「あぁ、どうしましょう。僕の妻がおかしくなってしまいました」



ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている彼。

誰があなたの妻になったのよ!



「‥そうだ。僕の家、すぐそこなんです」



だから?だからなんなのよ?

嫌ーな予感がするのを、的中しないで、と祈りながら彼を睨み続けるわたし。






「――僕の家で介抱してあげますよ」




ニッコリと微笑んで、わたしの予感どうりの台詞を吐いた彼は、地面に俯せているわたしに近づき、わたしを抱き上げた。――米俵のように。



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