恋して、チェリー


「こんなのもらったの」

スカートのポケットから、例のモノを取り出す。


「――あ、これ」

いち早く異変に気が付いたのは、オシャレ番長の比奈だ。



「……うっ、くさ」

香水が苦手なキナは、まだ強く残る香りに眉を寄せた。


「キナ、そんなしわ寄せてると、クールビューティーな顔が台無しだよ」

と、あたしから一言。



「何か知ってるの?」

「これ、期間限定で発売された香水」

――彼とデートした時、たまたまウィンドウに飾られてたの。



「コンセプトは“意中の彼を振り向かせる”香り」

――表には出なかったけど、これって裏テーマもあるの。


「え? 何?」

やたらと詳しい比奈に、その続きを催促した。



「略奪愛」


“あなたの大事なものを奪ってあげる”

瞬間――3人の視線が、この文字に注がれた。


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