恋して、チェリー


「で? 何で昼、あんな場所に行ってたんだよ?」

ひとり仲間外れにされた王子は、昨日に引き続き不機嫌だ。



「じゃあどうして、あたしに気付かなかったの?」

――お昼休み、恭一くんの教室に行ったんだよ?


「女の子に囲まれててさ……」

ぶーっと、唇を尖らせた。



「何? ヤキモチ?」

“そうですよ”と目で訴えると、まるで勝ち誇ったように――スッと目を細めた。



「行こうとしたら、ちょうどいなくなってたんだよ」

なんちゅー、タイミングの悪さ。


そんな小さなすれ違いから始まって、気が付けばふたりの間には、大きな溝。


フッと過ぎった、恐ろしい考えをパパパと手を振って追いやる。



「……ん、」

拗ねた子供のように、無言のままポケットからソレを取り出す。


反応を見たくて、じいっと王子の瞳を見つめた。



「なんだよ、これ」

それを手に取った瞬間。


――多分、あの香りが鼻に届いた瞬間だと思う。



「……」

ショコラ色の瞳が、陰った。


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