恋して、チェリー
「ヒュ~!」
「名前なんていうのー?」
始まった男の子からの冷やかしも
「くるみっていうの! よろしくね」
さらりと交わしていく。
……ああ、何か嫌だ、すごく。
確かに似ているかも知れない。
“双子”なんて言葉があちこちで飛び交ってて。
あたしなんかよりも、胡桃ちゃんの方がキラキラしてるように見えるから。
ピンク色のハートの裏側から黒くドロドロした劣等感が流れ出す。
「恭のクラスはあそこだよね!」
キラキラした瞳をくりくりさせながら、前方に見えてきたクラスを指差した。
“恭”そう呼んでたんだ……。
恭一くん……、あたしと付き合ってくれたのは
この子にあたしが似てたから?
そんなこと、考えたくないのに。
ピンク色のハートが、黒色に浸食されていく。
「恭……っ!」
自分に向けられている女の子の視線をものともせず、一直線に駆けだしていった。
その背中には、恋する気持ちが溢れ出しているように見えたんだ。
王子の周りにいた女の子たちが、勢いに押されてサザッと退く。
一瞬、驚いたように教室に入れずに立ち尽くすあたしを見た後。
ついに光を受け入れなくなった冷たい瞳で、彼女を見下ろした。