クリヴァル
坑道を走る。
口の裂けた犬だけに限らず、さまざまな化け物が現れた。
地面から突き出してきた鉄の大ミミズ、子供の頭ほどの腹を持つ毒蜘蛛。
「……ふっ……ふっ……、…はぁっ、ストークちゃん、まだなのん?」
少しずつ4人の息が切れ始めた。
「………近いよ、ただこの魔族の多さは、なんなんだ…っ」
後ろにはすでに獣の息遣いが追って来ていた。
……甲冑を身につけ、全速力で何分走った?
サポートに回っていた、やや軽装のカロンだけは、涼しげな顔をしていた。
「…入って1時間が経ちました。入り口を守るミアさんに余裕はないはず、このまま中心まで走りましょう」
「…!」
先頭を走るボルグが一瞬足をとめた。
道が二手に分かれている。
4人の死神たちの判断は早かった。
「アタシたちは左」
ボルグが頷く。
「行くぞストーク」
ボルグにストークが続き、右の坑道へ走る。
「中心で会いましょう…!」
予定よりもかなりの遅れをとっている。一刻も早く、トレディアの元へ…
少しだけ、急(せ)いていたのかもしれない。
冷静さを保つのが自分の役目としているカロンも、
自信に満ちあふれたカノ―も、
数々の修羅場をかいくぐってきたボルグも、
未だ、トレディアの正体を掴めてはいなかった。