【完】甘いカラダ苦いココロ
横断歩道の信号が変わり、歩き出した時、サラリーマンのカップルの横を通りすぎる。
「沙耶ちゃん?」
――え?
男の声に反射的にその方向を見た。そこには、目を見開いて立っている女がいた。
見慣れたセミロングの癖のある濃い栗色の髪。伏せた長いまつげに黒目がちな少し猫のような瞳。その小さな手の先には名前を呼んだ男がいた。
……沙耶?
もう一度振り返って確認しようとした時、
「ショーゴォ」
甘ったるい声を出してRINAの唇が絡んできた。
適当に返して振り返った時には二人の姿は闇に消えていた。