夕陽の向う
3-2

睦子に話したように、少しでも多くの『団子』を作るために、自分の考えたことを、一人でも多くの人に伝えることができたら。

癌が発病してから、死んで行くまでの自分が、価値のないものであったと思わないで済むためにも、
自分は『団子』を作り続けたんだと、自分自身で思うためにも、
今までアクセスしたこともない、ブログというのを書いてみようと、元は思った。

元は、パソコンは、道具としては持っていたけれども、インターネットにつないでいなかった。

だから、プライベートでインターネットにアクセスしたことも無かったのだ。

「どうすればいいの?」

と、友人に聞いたら、すぐにいろいろ抱えて、家に来て、セットしてくれた。


ブログのタイトルは、どうしようかと考えた末、
『がんと共に死ぬまで生きる』
とした。

敢えて、『がんと闘う』とか『闘病』とかいう言葉を避けたのは、
「癌は自分が産んだ不良息子と考えればいい」
と、以前何かの番組で言っていたのを思い出したからだ。

癌は敵とは限らない。


睦子は、
『がんと共に元気に生きる』
がいいと言った。

「まだ、いつ死ぬか、死ぬかどうかも判らないんだから。
元気に生きて欲しいし。」

でも、元はそこは譲らなかった。

「仮に、元気じゃなくなっても、書ける限り書いていきたいんだよ。
できれば、本当に、死ぬときまで、意識のある限り自覚的に生きていきたいんだよ。

死ぬことは、マイナスのイメージじゃなくて、人はみんな死ぬのだから、死ぬまでは、できることをして、生きるとしたいんだよ。」
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