沈黙の天使
‡‡‡‡‡‡
気付けば午前十時頃。
自分の部屋からリビングへと移動していたが、絵美はどうやってリビングに降りてきたのか記憶が途切れていてよく覚えていない。
そして羽根が生えたために服が破けたことも、薄手のタオルが体に掛けられていることにも気付いていなかった。
「絵美ちゃん、十八歳になったのね…」
絵美に表情はなかった。
「少し落ち着いたかしら?」
絵美の背中を隣でずっと撫でていた祖母は食卓テーブルを支えにして立ち上がる。椅子に座る絵美の頭を軽くなでると、キッチンへ向かいお茶を煎れ始めた。
「あたし――天使なの?」
身動き一つせずに絵美は言う。
「天使って、不幸の象徴なんでしょ?天使になると家族が居なくなるって、存在しちゃいけないって!」
祖母の持ってきた二つの湯飲みが静かに置かれる。
「そうね……。みんなそうやって長い寿命を生きてきたわ」
祖母は手の中で湯飲みを回した。
「天使にもよるけど、子供を作ることを許されず、一人の人を愛することも許されず、ただ生きて死を迎える。
皆が知っていることだから、近づいてくる人も居ない。
沈黙の天使が現れるまでは、誰も逆らうことが出来ない運命」
なんて残酷な話だろう、と祖母の脳裏によぎる。が、しかし何も出来ない。
何もしてあげられない。
気付けば午前十時頃。
自分の部屋からリビングへと移動していたが、絵美はどうやってリビングに降りてきたのか記憶が途切れていてよく覚えていない。
そして羽根が生えたために服が破けたことも、薄手のタオルが体に掛けられていることにも気付いていなかった。
「絵美ちゃん、十八歳になったのね…」
絵美に表情はなかった。
「少し落ち着いたかしら?」
絵美の背中を隣でずっと撫でていた祖母は食卓テーブルを支えにして立ち上がる。椅子に座る絵美の頭を軽くなでると、キッチンへ向かいお茶を煎れ始めた。
「あたし――天使なの?」
身動き一つせずに絵美は言う。
「天使って、不幸の象徴なんでしょ?天使になると家族が居なくなるって、存在しちゃいけないって!」
祖母の持ってきた二つの湯飲みが静かに置かれる。
「そうね……。みんなそうやって長い寿命を生きてきたわ」
祖母は手の中で湯飲みを回した。
「天使にもよるけど、子供を作ることを許されず、一人の人を愛することも許されず、ただ生きて死を迎える。
皆が知っていることだから、近づいてくる人も居ない。
沈黙の天使が現れるまでは、誰も逆らうことが出来ない運命」
なんて残酷な話だろう、と祖母の脳裏によぎる。が、しかし何も出来ない。
何もしてあげられない。