沈黙の天使
「すぐ会えるわ。でも光だけの体になってしまっているから、会えても数秒で消えてしまうと思う」
切ない顔をする絵美と反対に、切ないながらも笑顔で答えるケイ。
「いいんだ。もう会えないと思っていたんだし、一目見れればそれだけで幸せだよ」
絵美はその言葉を聞くと、柔らかい笑顔を作る。
「あたしの今の力じゃ母上を戻すことが出来ない。完全な天使じゃないから。」
そこまで言うと薫に向き直す。
「だから、世界中に居る天使の力を吸い取らないと」
そう言って笑顔を作る。
「それって、私、天使じゃなくなるってこと?人間に戻れるってこと?」
興奮気味に喋る薫に数回笑顔で頷く。
「あたしが完全な天使になるためにも、天使の存在は必要だったの。
いつ産まれるのかが判らなかったから、天使を絶やすことが出来なかった。
結婚して結ばれてしまうと、天使の力が薄まってしまう。
最初は母上の力を人間の体に少しずつ分けていって、あたしが成長してくると、あたしの力を少しずつ分けていったの。
だから今存在する天使の殆どはあたしの力で天使になってしまった人。それをあたしの体に戻すの。それもこれも全部父上の我が儘のせい。怨むなら父上を怨んでね」
そう言ってニッコリと笑う絵美に、同じく笑顔で首を横に振る薫。
「さっきも言ったけど、もう何千年も昔の話。それに普通の人間に戻れるならそんなこと、許しちゃうわよ」
待ち遠しいと言わんばかりに笑顔で絵美を見つめる。