沈黙の天使
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ふと時計を見ると十一時を過ぎていた。祖母は寝室へ行ったまま戻ってこない。すでに冷め切ったお茶を一口、口に含む。

「おばあちゃん、どこ?」

嫌な予感がする。同じ姿勢で座っていたからか、痺れかけた足を庇いながら祖母の寝室へと移動する。

ドアは半分程開いていた。ゆっくりと押し開けると、ベッドの上に何枚かの衣服が散らばっている。

『あたし、服が…』

自分の着ていたものが破れているのに気付きベッドの上に手を伸ばそうとした時、その裏側からはみ出す足を見つけた。

『ドクンッ!』

心臓が波打つ。ゆっくりと近付き触れたその足は祖母のものだった。

フローリングに無造作に倒れ込むその顔は苦痛に満ちている。

「お、おばあちゃん?おばあちゃん?!」

何度も揺するが反応がない。冷たくなった足先。呼吸のない体。

「いや、いやぁ……いやあぁぁぁ!」

ぽたぽたと音を立てて大粒の涙が床へ落ちる。

「ママ…おばあちゃん…ママ…おばあちゃん…」

いつしか絵美は気を失っていた。
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