葵街学園記
嘘ばかりついて生きてきました。
嘘です。本当に嘘です。
たまに、本当の事を言いました。
でも、誰も嘘を見抜いてくれないのです。











まだ東風とは呼べないまでも、少しは暖かさを増した風に煽られながら律は高世に笑い掛けた。

高世は今日も屋上に佇んでいる。
何を思ったのか、今日は差している唐傘の他にもう一本唐傘を手にしていて、律は一瞬訝ったがまぁいいかと流す事にして近付いてゆく。


「おはよう、高世」


邪気の無い笑みを自分に臆面も無く向けてくる律に、高世はいつものように不快げに眉をひそめて返した。


「おはようさん、律。
また君と会ってしまったのかと私は絶望を禁じ得ないよ。
街中でいきなり携帯小説を手渡された気分だ。
なんだねあの携帯小説というのは。主人公はさげまんか自己中という現代社会を縮小したような内容は。
君と同じようにゴミ箱にすぐ捨ててしまいたくなるな、あれは。まぁ実際捨てたんだが」


相変わらず台詞が長い高世に律は苦笑してみせると、聞いてよーっと、勢いよく腕を持ち上げてみせた。
じゃら、と金属の擦れあう武骨な音。


「また枷の重さ上げられたんだよーっ」


登校のみが義務な「限界者」だが、問題を起こせば「指導」と称してペナルティめいたものを課せられるのだ。
初登校から律がこうして「指導」されたのは十数回に渡る。
全てが、「暴力」がらみなのだが本人はあまり気にしていなかった。
只、枷の重さが増すのは不快らしい。


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