鼓動より速く

6.海で見付けたモノ

4月の海は、とっても冷たさと、淋しさに溢れていた。
砂は、冷たさのせいなのか、ひんやり湿り、触れる風はさらに冷たかった。
唯一、助けられたのは、雲の無い快晴という天気。太陽が何者にも遮断されず、ボクとハルカに降り注ぐ。
手を太陽に透かせば、直接、太陽の温かさを感じられた。

「来て良かったネ!」

笑顔全快でハルカは笑った。
ボクも笑う。
しかし、笑っていないのは、ボクらの後方。
寒さに耐えるように、鋭い眼光をこちらに向けているボクの両親。隣のおじさんは煙草を吹かしながら、リラックスをしているって感じだった。

春の海は案の定、冷たい。
人が泳げる訳も無いし、海の家もやっていない。
ガラクタの負担は、否応なしに襲い掛かる。
両親は当然のように、海に行く事を認めなかった。学校をサボって行く訳だから、尚更だ。
けど、おじさんも同伴する事を言えば、幾分か承諾をしてくれた。
だが、認めたくない所もあるのか、自分たちも行く、と言い出し、今のこの風景になっている。
加えて、この風景を更に最悪にしているのは、ボクの姿だ。
ダルマのように、衣服を纏い、身動きが取りづらい。辛うじて、外気に触れている手にはノートとペンを持っている。
遠くから見れば、愉快な着ぐるみだ。
出来れば、ハルカのような格好が良かった。
サイズの合わない白いカッターシャツ。
同じくサイズの合わないジーパン。
楽な格好だ。
憧れが、寒いだろうとひそかに思ったりした。
薄着にも程がある。
仕方ないので、ボクのマフラーを渡したけど、寒さは軽減される訳もなかった。
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