鼓動より速く
ハルカのお母さん。
おじさんの奥さん。

ピンと来ない。記憶に無いからだろう。
感傷的にもなれない。
けど・・・・

「ミノル君?」
「え?」

仏壇を見ていた事にハルカも気付いたらしい。

「お母さんがどうかした?」
「いや、どんな人だったのかなぁーって」
「さぁー。私も覚えていないからなぁー」

ハルカは、そう言い笑った。

けど・・・・ありがとうって、言いたい。そして、すみませんって。

「ホラ、部屋行こう!」
「ミノル君が止まったんじゃん」

お辞儀をして、ハルカの部屋に入った。

「・・・」

ボクの中の時間が止まった。

「汚いでしょ?」

なんだこの部屋。
床いっぱいに原稿用紙らしき紙が散乱している。
踏まないように、部屋の中に入るボクだが、ハルカは普通に踏んでいる。

「要らないの?んじゃ捨てたら?」
「捨てられないよー」
「どうして?」

ボクは一枚、紙を手に取った。
『・・・目的がある。
・・・向かう場所が・・』

「なにこれ?」
「詩だよ。どうしても続きが書けないんだ」

知らなかった。
ハルカが詩を書いている事を。

ぱっと見ただけで、千枚はある。
ビッシリ書いているモノや、一文字だけ、とか色々ある。

「ん?」

ボクはその中に埋もれている何を見付けた。

原稿用紙を枯れ葉を払うように退けると、キャンパスが出て来た。
真っ白で、新品なキャンパスだ。

「ハルカ、これは?」
「絵を描きたくて・・・でも今は書けないの」
「どうして?」
「さぁー?」

ハルカはそう言い、ベットの上に飛び乗り、布団を被った。

「あ!」

ボクはどうするか、迷った。
ハルカはこの部屋の世界で生きてる。
この方が幸せな気がした。

壁に掛かってる新品の学生服は何故か、この部屋には似合わず、ハルカが着ても似合わない。

そう感じた。
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