青いリスト

空白の時間

私は手首を切るのも煩わしくなってきた。
認めたくない事実が目の前に現れたからだ。
それは虚無感や無意味という何をしても何も変わらないという現実である。
それは私自身の問題ではなく、他者に対してもそうだ。
私は言葉を失った。
言葉を発する前に頭の中でブレーキがかかる。
それを言った所で何も変わらないというブレーキだ。
無意識の中で入ってくる言葉も、耳では聞こえるが私自身である脳の関所を通過しなくなった。
植物人間のような状態で、見た目は生きているが死んでいるのと同じ状態である。
イジメられた傷後も、社会に対する憎悪も、自分自身の存在への執着心も全て無くなった。
唯一残されたのは死への執着であった
だが、自殺はしたくなかった。そんな勇気は無い、というのも多少あったが、やはりグラフの中に埋め込められるという事を想像すると出来なかった。
そして、死者の声を私ははっきりと聞いた。死者というのは自分で命を絶った人達だ…
死者は私を誘導しなかった。死者は私に[生きろ]と言った。それは幻聴では無く、はっきりと私の脳を通過した。
私は死者の本当の心の優しさに触れた。
[死ぬのは自分だけでいい…]
私は自殺を肯定しないが自ら死を選んだ人達について否定するつもりもない。
それは優しかったからだ…最後の最後まで人の事を考えながら死んでいった優しさが、私の心を如実に包んでくれる。
私がもし、自分で命を絶つ前に思うのはやはり人間に対しての申し訳なさと、二度と私のような人間になる者が現れないように祈る事だと思う。
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