青いリスト
紀子の場合
紀子の病名は常人の想像を遥かに超えるものであった。
[境界性人格障害]
[パニック障害]
[拒食または過食症]
[鬱病]
容姿は普通でガリガリに痩せた体に不釣り合いな程、顔は酷くむくんでいた。
さらに紀子はアルコールと薬物にも依存していた。
看護士の紀子はその職権を利用し、ありとあらゆる薬物を手にしていた。
幼少期に両親が離婚し、現代に至るまで教育熱心な父親の元で暮らしていた。
ちょうど三年前、再三、忠告を受けていた医師に女性にとっての死の宣告を告げられた。
[残念ながらあなたは妊娠出来ない体になりました]
あまりにもショッキングな事実を突き付けられたが、告げた医師が呆れる程、紀子は冷静だった。
看護士である紀子は極めて優秀であった。
医学知識のみならず、他の分野のあまりにもの知識の豊富さに、周りの看護士達は驚愕するほどであった。
そんな紀子は当然のように注目の的になる。
個人一人が注目されるという事はどちらかでしかない。
尊敬されるか、妬まれイジメられるかだ…
紀子は後者の方だった。
人格障害は対人関係を築くのに大きな壁となる。
さらにその障害がイジメを助長させる要因ともなる。
イジメられると職場を変え、変えてもイジメは止まない。
紀子は自分を責めた。
だが、自分の人格を操れる程、自分自身が持っている壁は高かった。
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