青いリスト
[何故私が悪いの?]
[何故私だけがイジメられるの?]
紀子の言う事は全て正論だった。
だが社会には正論を不必要とする暗黙の了解という事が必ずある。
上司である人の行動を真似し、それで叱責を受ける事や、昨日まで善とされていた事が翌日には悪となっている場合が必ずある。
この大きな社会の矛盾を紀子は理解出来なかった。それは障害のせいか、理不尽な事は納得できない性格のか、どちらにせよ紀子はあまりにも[純]過ぎた。
[妊娠出来ない]と告げられてから、紀子は己のありとあらゆる病名を周りに風潮していった。
元々、子供を産みたいという願望がなかったのは事実だが、その[選択肢]すら無くなってしまった事実は、動揺を隠すというより、女性として生まれてきた本質を根本的に覆す事由となるのは必然的だ。
やはり紀子は傷ついていた。
周りに風潮していったのもそのあまりにも[純]たる心が、人が当たり前のように、自分の悲痛な思いを共感し、共有してくれると疑いなかったからである。
だが現実は正反対であった。
周りの人々は嘲笑い、蔑み、唯一、信頼出来た友でさえも紀子の前から去っていった。
紀子に対してへのイジメはこれを機にエスカレートしていった。
エスカレートしていった原因は[自分はかわいそうな人間だから、もうイジメないで]と言う思いとしてすり替えられたからである。
だが周りが思うように、紀子はそういう打算が出来る人間ではなかった。
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