青いリスト
現代、彼女は一時の愛を手に入れながら過ごしている。
生きる事も死ぬ事も出来ない彼女は、男の体を求める事で女性として生まれてきた存在を自分で確認している。
男なら誰でもよかった。
彼女は妊娠出来ない事実を武器にした。
最初からそういう打算は出来なかったが、その事実を告げると男は安堵に満ちた表情で紀子を抱いたからだ。
[私には中で出せるよ]
男にとって都合が良すぎる女性になった。
それは愛ではないと充分分かっていたが、彼女を抱く時、男達は優しかった。一時の優しさだけでも欲しかった…
男達に抱かれながら、彼女は社会との共通点を見つけた。
悲観的な事実も、誰かにとっては得となりえるという事だ。
貧しさは豊かさを際立たせ、イジメられる子が居れば、イジメる側の連帯感を生み出す。
だが、彼女はその表明だけでしか見ていない。
利用される側は常に弱者だという事を…
視点を変えれば、分からないという事が現代彼女が生きている要因なのかも分からない。
もし分かっていたとしたら…
それは何て悲しい事実なんだろうと私は思う。
それでも生きろと一体誰が言えるというのだ。
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