赤い白ワイン
「誰だ、お前」
彼が私の耳許で訊ねる。
押し殺したその声は、殺気に満ち満ちている。
ふと彼の肩口まで掛かる銀糸の髪が一瞬、私の首筋に触れた。
私はゾクリと身体に電撃が走ったような感覚を覚える。
まるで彼の手の内の切っ先が首に触れたかのように。
しかし、ここで怯えていても埒が明かない。
私は相手に刺激を与えず、また自分を落ち着かせる意味も兼ねて、普段よりゆっくりとした口調で言葉を繰り出した。
「あのなあ。“誰だ、お前”って、それはこっちの台詞だ。
漸く意識が戻ったかと思えば、いきなりコレだからな…」
私は眉根を寄せて、この場逃れのような言葉を吐き捨てる。
我知らず身体が強張っている。
緊迫した空気、
取り巻く緊張感に胸を締め付けられるような苦しさを感じる。
生きている心地がしない。
声が、
身体が、
思考が無駄に強烈な圧力によって震えている。
一体何なんだ、コイツは!?
三日間、仮死状態の一歩手前と言えるほどに熟睡していたと思えば、突然目を覚まして私に襲い掛かってくる。
しかも異常な瞬発力に加えて、この総てを貫き通しそうな殺気の強さといったら尋常ではない。
今まで私が接してきたどんな犯罪者より凶悪・凶暴に思えた。
彼が私の耳許で訊ねる。
押し殺したその声は、殺気に満ち満ちている。
ふと彼の肩口まで掛かる銀糸の髪が一瞬、私の首筋に触れた。
私はゾクリと身体に電撃が走ったような感覚を覚える。
まるで彼の手の内の切っ先が首に触れたかのように。
しかし、ここで怯えていても埒が明かない。
私は相手に刺激を与えず、また自分を落ち着かせる意味も兼ねて、普段よりゆっくりとした口調で言葉を繰り出した。
「あのなあ。“誰だ、お前”って、それはこっちの台詞だ。
漸く意識が戻ったかと思えば、いきなりコレだからな…」
私は眉根を寄せて、この場逃れのような言葉を吐き捨てる。
我知らず身体が強張っている。
緊迫した空気、
取り巻く緊張感に胸を締め付けられるような苦しさを感じる。
生きている心地がしない。
声が、
身体が、
思考が無駄に強烈な圧力によって震えている。
一体何なんだ、コイツは!?
三日間、仮死状態の一歩手前と言えるほどに熟睡していたと思えば、突然目を覚まして私に襲い掛かってくる。
しかも異常な瞬発力に加えて、この総てを貫き通しそうな殺気の強さといったら尋常ではない。
今まで私が接してきたどんな犯罪者より凶悪・凶暴に思えた。