いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「ごめんね?めんどくさい男で」

「ううん、そんなこと…」

「でも、ちゃんと僕のことを考えてほしかったからさ」

「うっ、うん…」


そうだよね…。いくらパニックになってたとはいえ、ちゃんと佐山君の想いを考えてなかった。

佐山君の言う通り、ちゃんと考えて返事をしよう。私も真剣にならなきゃ…。


そう自分に言い聞かせたところで、佐山君が鞄を持ちながらニコリと私に向いた。


「もうみんな帰っちゃったね。せっかくだし、このまま一緒に帰らない?」

「……え?」

教室を見回すと、数人残っていたクラスメイトはみんな帰ったみたいで、残されたのは私と佐山君だけだった。


「あ、何か用事がある?」

「い、いや、えっと…その…」

「……もしかして、久世と一緒に?」

「あぅ…、う、うん…」

私のことを好きだという人に、他の男子と帰ると告げるとは、なんて酷なことだろうか…。自分が同じこと言われたら、絶対立ち直れない気がする…。

気まずい思いでいる私をよそに、佐山君は「そっか、残念」と、やはり明るく返してくる。


あ…。そういえば、思い出してしまったけど…。


……久世玲人を待たせているままだ…。まずい…。なかなか戻らない私に、久世玲人もいい加減キレているかもしれない…。

ど、どうしよう…!!


「原田さん?どうしたの?急に蒼白な顔して」


もしかしたら、また着信をシカトしてるかも…!!

佐山君の声にも気付かず、急いでポケットの中の携帯を取り出そうと手をかけたところで、教室のうしろの扉がガラッと開いた。


背中にヒヤリと悪寒が走った気がする。



「……菜都、遅い」


気のせいじゃない。その低い声に、ブルル、と身震いしてしまった。


恐る恐る振り返ると―――…


声の主――不機嫌そうに眉を寄せた久世玲人が、こちらを睨みつけるように立っていた。


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