いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「く、久世君っ…!!」

どうしようっ!!まさか教室に来るなんて!!しかも、……すっごい怒ってるしっ!!

久世玲人からは不機嫌オーラが放たれており、射るような視線は体が縮み上がるほど。

1人でビクビクしていると、久世玲人はゆっくりとこちらに足を進めながらチラリと佐山君を一瞥した。


……そして、再び私に視線を戻す。


「何してんだ。早く帰るぞ」

「あ、うんっ…ご、ごめんっ…!!」

目の前に立った久世玲人に、鋭い目つきで見下ろされる。

直接的に私を怒りはしないものの、その声色は先ほどより明らかに低くて硬い。

こ、恐いよっ…!!

その様子に動けないでいると、久世玲人は「菜都」と苛立ちを含ませながら、佐山君から引き離すかのように、私の腕を掴んでグイッと引き寄せた。


「キャッ…!!」

「帰るぞ」


そう言って久世玲人は、バランスを崩してよろける私なんてお構いなしに、無理やり引き連れてこの教室から出て行こうとする。

「あ、あのっ…ちょっと…」

怒るのも分かるけど、せめて、佐山君にさよならの挨拶くらい…!!


しかし、強引な久世玲人を振りほどくことも出来ない。困惑しながら、チラリと佐山君を振り返った。



私のそんな視線に、佐山君も苦笑しながら口を開く。

「久世、ちょっと強引すぎない?僕、原田さんと話してたんだけど?」

穏やかだけど、どこか挑戦的な言い方。


さ、佐山君、そんな挑発するようなこと言って大丈夫だろうか…。
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