いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
久世玲人も足を止め、ゆっくりと佐山君を振り返った。不快そうに眉を顰めながら佐山君を睨みつけている。

しかし、そんな恐ろしい視線にも佐山君は怯まない。


「それに、原田さんが怖がってるよ?何をそんなに怒ってんだよ」

「てめえには関係ねえだろ」

「うーん…そうでもないけど」

「……ああ?」

佐山君の意味深な言葉に、より一層久世玲人の眉間のシワが深くなるけど、それでも佐山君は臆することない。

穏やかな口調のまま、言葉を続ける。



「久世、原田さんのこと、……どう思ってんの?」

「……何が言いたい」


久世玲人に放たれた佐山君の言葉に、心臓がドクリと鳴る。


「前にも言ったけど、付き合ってるように見えないからさ。本当のところは、どうなんだろうと思って」


遠慮ない佐山君の問いに、久世玲人は答えない。変わらず、鋭い視線で佐山君を見据えたまま。


本当は、私のことをどう思っているのか…。

この沈黙の時間が私の中の緊張感を煽り、ドクドクと鼓動が響く。


久世玲人は何と答えるのか、そればかりが気になっていると、佐山君が小さく苦笑する声が聞こえた。


「ごめんね、原田さん」

「えっ…?」

突然私に向けられた言葉に、驚きながら佐山君に目を向ける。


「こんなこと言うつもりはなかったんだけど、つい。引き止めてごめんね、もう帰るよ」

「あ…う、うん…」


そして、佐山君は久世玲人の答えを聞かないまま、私にニコリと微笑む。


「じゃあね、また明日」


まるで何事もなかったかのように、ヒラヒラと手を振りながら帰っていく佐山君に、さよならの挨拶も返すことができず、その背中を見送った。

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