先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「確かに好きです、正直、裕実との事なんか忘れてしまう位。でも、宮澤さんが本当に僕を好きじゃないのに誘っているんじゃないかって、だから今はそういう事をしません」


キッパリと言い切った後、一度だけ強く抱きしめてから体を離そうとしたら、胸へ顔を埋めて大人しくなる。


「神崎……」


泣いているのだろう、きっと。


でもその顔を上へ上げさせてキスが出来る程、僕はまだ男になれていない。


携帯小説家として成果を出せていないし、こんな状態の宮澤さんに優しくする事しか出来ない。


裸の背中を何度もそっとさすり、何も言わずに包むだけ。


臆病者と言われるかも知れないけれど、それが僕。


過去、深く傷ついた経験をしているから。
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