先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「立て、神崎」


二度目の鋭い声が頭上から降って来るが、立ち上がりたくない。


裕実からバカにされ、宮澤さんには厳しい態度を取られ、男のプライドがズタズタになったから。


「立てよ! オラァ! 」


業を煮やしたらしく上から襟首を掴み、無理矢理体を引きずり上げソファへ放り投げる。


この体からこんな力が出るのかと驚き、顔を見上げれば……。


「最低野郎……、あたしを止めたクセにお前は何してんだよ……」


大粒の涙が白い頬を伝い、形のいい顎で1つに重なり真昼の光を受けて輝きながら床へポタリと零れているのが見えた。


あの時、やっぱり原さんの元へ行かなかったんだ。


1人で考えて、早朝、僕を迎えに来てくれたのに。


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