先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
アメとムチ
翌日の夜、バイトから戻ってみればいい匂いが廊下に漂っている。


カレーの匂いだ、これは。


このマンションには家族も多く住んでいるから、どこかの家で作っているのだろうなと思い、実家へ帰りたくなる。


でも戻れそうにない、ラノベ作家になる時点で親とはケンカを繰り返していたし。


『子供だましの絵本なんか書いて! 』
『違うよ! 絵本なんかじゃないんだ! 』
『そんな余裕があるのなら、真面目に勉強しなさいっ! 帝都大に合格出来ないでしょ』


親が望んでいた僕の進路は帝都大の法学部に入り、弁護士か官僚になるというかなり堅い方面。


僕はどうせ帝都大に入るのなら、文学部がいいと思っていたのに。


そこで、帝都大の入試で手を抜いてわざと落ちてやり、自分の稼いだ印税で私大の文学部へ入ってしまった。


以来、親とはもう何年も顔を合わせていない。
< 42 / 183 >

この作品をシェア

pagetop