先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
すると自分が笑っていたのに気付いたのか、宮澤さんは急に元の女王様然とした表情へ戻り、

「神崎、頑張れよ」


と肩を手で叩いてくれた。


ムチではなく手で……。


その温かさは宮澤さんが部屋を出て行った後も僕の肩から消えず、胸の中へある物をもたらす。



裕実と別れてから、3年ぶりに他人へ対する恋愛感情を持った。


でも相手はドS、僕は中途半端なMで……。


きっと相手になんかされないだろうと思うけれど、それ以降彼女が部屋を訪れる度に心拍数が上がり、まともに顔が見られない。


「ランキングにやっと出たな、ただしこれからが勝負だ。油断はするな」
「はい……」
「yumi☆はもう1位だから、これを追うには今まで以上のPRが必要になる。そこで、メルマガを作成しろ。神崎! 今、大事な話をしているんだ、顔を見ろ」


厳しい口調で言われても顔なんか上げられない、目の中にその顔を映せば一晩中それに苛まれる事になる。
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