先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
食事が終わると今どこまで進んでいるか確認、無事に第一章を書き終えているのを知った宮澤さんはほんの少しだけ口元を緩めて笑う。


「なかなかいいじゃねぇか、このヒロインと相手役の出会い方」
「ヒロインが相手役の独特の文章に気付くっていう出会い方、書くのに結構悩んで……。だから、僕、久しぶりに勇気を出して巨大掲示板を読んでみたんです」
「どのスレを読んだ? 」
「ラノベです……でも、僕の名前なんかどこにもありませんでしたよ。もう過去の人間ですから」


一時は僕の作品に対するスレッドが乱立したり、僕を騙る人が勝手な書き込みをしていたものだけれど、もうそんなのは目に付かない。


人の噂も75日と言うから、そう苦笑いを浮かべられる程。


「お前が立ち直りつつあって良かった」
「え? 」


宮澤さんの口調がいつもより優しい、そう感じて思わず後ろを振り返ると今度は物凄い笑顔を見られた。


こんな表情は見た事が無い、だからつい僕も笑顔になる。
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