傷、のちに愛
私は、いつになく大胆だったと思う。
離れていきそうになった千秋さんの指を掴むと、彼の顔を見つめてこう言った。
「…私も、離れたくない」
その目に見つめられたい。
その声で呼んでほしい。
自然に、触れてほしくなった。
緊張してなのか、私の手は震えていた。
拒絶しないで。
それだけを考えていた。
―――しばらく間が空いて、千秋さんはやっと口を開いた。
「やめてって言われても、たぶんやめられないよ?」
私は静かに頷いた。
…好きな人に抱いてもらえる。
胸の中は密かに喜びでいっぱいだった。
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