乱華~羽をくれた君~【完】
自分は強いと思っていた。
今まで義父に襲われても、泣き顔なんて見せなかった。
泣いたら負けだと思ったから。
あたしはしばらく泣いてしまった。
栞は理由も聞かずに、ただそっとあたしの背中をさすってくれている。
「ごめんね・・栞・・」
「なーに言ってんの!こんな時はあたしにまかせなさいって言ったじゃん!」
「ありがと・・」
涙でぐちゃぐちゃなあたしの顔。
栞の前で初めて泣いたから、ちょっと恥ずかしい。
「ねぇ奈緒?今日の夜さ、亮と会うんだけど、陸さんも来るみたいなのね?だから奈緒も来ない?」
「・・え?」
陸さんの名前。
一気に心が温かくなる。
陸さんを想っているときはいつも義父の事を忘れられていた。
会いたい・・
「ね?行くでしょ!?
てか決定だからね!気分転換に!いつもよりいっぱい話せるかもよぉ?
あ、服とかはあたしの貸すから心配しないで!」
満面の笑みを見せる栞に、あたしは頷いた。