乱華~羽をくれた君~【完】
陸さんにせっかく会えるのに、こんなボロボロの格好じゃ会えない。
栞の家で服を貸してもらい、着替えることにした。
栞がクローゼットの中からあたしに渡したのは、この前買ったばっかりだと言っていた黒のワンピ。
高校生にしては大人っぽいデザインだった。
「え、これ買ったばっかじゃなかった!?いいの!?」
そのワンピースを広げて栞に見せる。
「いいのいいの。どうせ親の金で買ったんだから‥もし気に入ったならあげるよ?」
栞はフッと、どこか悲しい笑みを浮かべながら、化粧を直し始めた。
栞のうちは2DKのアパートで、小学生の妹もいる。
お父さんは栞が小さい頃亡くなったそうで、お母さんは女手ひとつで子供二人を育ててきたと、前に言っていた。
うちの母にもそのくらいの強さがあれば・・
なんて思った。
それ以上栞は自分の家の事を何も話さない。
どこの家だって色々と事情ってもんがあるんだろうから、あたしも聞かないでいた。
でもいつか栞が何か相談してきたら、いつでも助けてあげたいって思ってる。