ひと夏の経験
「奈々香!」
部屋に戻ろうと立ち上がると名前を呼ばれた。しかも呼び捨て。
初めて名前で読んでくれた。
なんだかとても嬉しくなった。
「ここにいろよ」
一輝くんは私にそう言った。
゛ここにいろよ゛
一輝くんの言葉になぜか涙が溢れた。
椅子に座る。
泣いてる私のそばにただそばに居てくれた。
何かを言うわけでもなく、慰めるわけでもない。
ただただそばに居てくれた。
安心して思いっきり泣いた。