ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
スポーツ大会当日。
天気は晴れ。
体育館は天気と熱気で、蒸し返っていた。
「みんな、ごめんなさいっ!」
津田が頭を下げて、謝った。
そう、試合は2回戦目で、負けてしまったのだ。
と、言っても…2回戦目にして、優勝候補の3年生と当たってしまったから、しょうがない。
津田はみんなに声をかけてもらった後、一度俺を見て、にっこりと笑った。
楽しかった…と、いう意味だろう。
津田は活躍こそしなかったが、試合に出て、補佐をしっかりとやってくれた。
俺もつられて、微笑み返した。
「何、見つめあってんのぉ〜?」
少し怒った風に言ったのは、間。
俺に好意を持ってくれているのは、なんとなく分かるけど…怒る意味は分からない。
「別に」
だから、冷たく返事をすると、
「ただ目が合っただけだよっ!」
津田は慌てて、間に言い訳する。
「でもっ、見つめ合ってたぁっ!」
めんどくさい…こういう女、苦手…。
そんな俺の思いも知らず、間はずいっと一歩、近づいた。
「西藤くんってさ…苺ちんが好きなのっ!?」
ドキッ
その言葉に、すごく動揺し、
それと同時に罪悪感…麗奈の顔が浮かんだ。
あの日以来、まともに話していない…。
「は?」
睨みつけるように俺は間を見た。
「どぉなのっ!?」
間は食い下がらない。
意外と気が強いみたいだ。
「そんなんじゃないって!西藤くん彼女いるし、あたし1年の時から友達だからっ!ね、西藤くん?」
“あぁ、好きだよ”
この一言が言えたら、どんなに楽だろう。
だけど、その一言を飲み込む。
「あぁ、バカな事言ってんじゃねーよ」
「じゃあ…やっぱり先輩が好きなのぉ?」
さっきまでの勢いが、間から消える。
「そうだよ」
「ふーん…」
“そうだよ”そう言った時、津田の顔が見れなくて…
ただ、掌の中には、大量の汗が滲んでた。