ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「苺〜!!」

どうしていいか困っていると、遠くから懐かしい声がした。

「由紀ちゃん?」

津田が振り向く。
駆け寄って来たのは、“由紀ちゃん”こと、中野。

「翔くんが、苺呼べって言ってたんだけど…クラスの子に捕まっちゃって、遅くなっちゃった」

翔くん…?
あぁ…津田に付き纏ってる、あの1年か。

言いながら中野はちらりと、こっちを見て、目が合った。

「おす」
「西藤くん、久しぶり」

中野はそれだけ言うと、また津田に視線を戻す。
どうやらまだ、嫌われてるみたいだ。

「試合終わった?」
「うん、さっき負けちゃった」

津田はへへへと笑う。

「わたしも負けたから同じね。じゃあ、翔くんの応援行こっか」
「…うん」

津田が行ってしまう…そう思うと寂しく感じて、同時にあの1年が羨ましく感じた。

「ねぇ、メグも行っていいかなぁ〜?」

間はにっこり笑顔で、津田と中野の間に割り込む。

「え?」
「あ、同じクラスのメグちゃん!こっちはあたしの親友の、由紀ちゃん!」

津田は少し焦った様子で、説明する。

「間メグミです〜メグって呼んでぇ♪」
「はぁ…。中野由紀です」
「由紀ちん♪いいかなぁ〜?」
「い、いいけど…」

中野は明らかに、引いていた。
それもそのはず、中野と間のキャラは掛け離れている。

「ありがとぉ〜♪じゃあ、西藤くんも行こぉ♪♪」
「…は?」

唐突な間の言葉に、誰も予想していなかったのだろう、津田も中野も目を丸くした。

「だってぇ、試合終わったし暇でしょぉ?行こう行こう♪」

間は俺の腕を掴む。

「ちょ、おい…」
「由紀ちん、何処のコートぉ?」
「え?あぁ…こっち」

俺は半強制的に、間に引っ張られながら、同行する事になった。
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