ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

着くと、その1年は試合の真っ最中だった。

何度か、津田と一緒に居るのを見かけた事があるし、何より小さいからすぐ分かる。

俺たちがコートの横に立つと、1年はこっちに気付いて、津田を見て微笑んだ。
津田も、にこっと笑って手を振る。

なんか…ムカつく。

得点表を見ると21ー23。
相手は3年生で、接戦の良い試合をしているようだ。
だけど、やっぱり3年には敵わないだろう。そう思った…が、

津田に付き纏ってるあの1年…すごい。

よく動き、小さいのにとても高く跳ぶ。
背によるハンデは、ほとんど感じられなくて…

バンッ!!

あの1年のアタックで、試合は終了した。
もちろん、1年チームの勝ちで。


「苺先輩ーっ!」

号令が終わった後、彼はすぐ津田に駆け寄った。
一瞬、こっちを見たように感じたけど…思い間違いだろうか。

「見てくれましたかっ?」
「うんっ!翔くんすごいねっ!!」
「俺、苺先輩の為に、最後決めたんすよっ!」

イラッ…

バコッ!!

「って!」

突然、1年の後頭部にゴムボールが、勢い良くぶつかった。

イラッとはしたけれど、もちろん俺じゃない。

犯人は、さっきの試合相手の3年生。

「女とイチャついて、いい気になってんじゃねーよ!チビがっ!!」
「…」

周りの空気が変わって、1年は黙り込む。
言い返しても、更に怒りを煽るだけで、逆効果だと気付いているのだろう。

「ふざけんじゃねーよっ!チビが目障りなんだよっ!」

そう言い残して3年は、その場を去ろうとした…が、

「…ちっちゃくて何が悪いの?」
「は?」

誰かの反抗的な言葉に、振り返る。

中野も…間も…1年も…俺も発言した本人を見た。

言ったのは…津田だった。
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